難波葱の話―土と時間が残した味
難波葱(なんばねぎ)って聞くと、
ただの「大阪の葱」やと思われがちなんやけど、
実はこれ、「なにわの伝統野菜」にも指定されとる、
ちゃんと歴史背負った野菜なんよね。
江戸時代な、
今で言う大阪市中央区の難波あたりは、
高いビルも観光客もおらんで、
一面、畑が広がる農村やったらしい。
そこで育った葱が、えらい出来がええ言うて、
評判になっとったんや。
話をたどると、
京都の九条ねぎのルーツが
この難波葱やったんちゃうか、
なんて説も残っとる。
弘法大師が難波から葱を持って京都に行って、
それが九条で根付いた、
そんな話やね。
「鴨南蛮」の“南蛮”も、
実はこの「難波(なんば)」が
転じた言葉や、言われとるくらいやから、
昔はもう、
葱といえば難波、
それくらいの存在感やったんやろなあ、と思う。
見た目はな、
細長くて、全体にやわらかい。
白ねぎみたいに太くて真っ白、
って感じやなくて、
葉の部分を食べる、いわゆる葉ねぎやね。
でもな、
この葱の一番の特徴は、
見た目やなくて、
ぬめりと甘み。
生でも独特のぬめりがあって、
火を入れるとそれがとろっとして、
甘みがぐっと前に出てくる。
香りも強いから、
薬味というより、
「主役として使う葱」
そんな扱われ方をしてきた野菜やねん。
大阪の出汁文化とは、
もう切っても切られへん関係で、
うどんに難波葱、
これはもう、
理屈抜きで相性がええ。
鴨肉とうどん、
そこに難波葱を合わせた
鴨なんば(鴨うどん)なんかは、
鴨の脂を、
この葱の甘みが受け止めてくれる、
ほんまにええ組み合わせやと思う。
肉吸いもそうやし、
ねぎ焼きみたいな粉もんでも、
「葱がおる」って感じが
ちゃんと出るんよね。
ただな、
そんな難波葱も、
明治以降の都市化で、
畑が消えてしもて、
一時は、
ほとんど姿を消しかけた。
それでも、
大阪府内の農家さんらが、
種を守って、
細々とでも育て続けてくれとった。
今は、
松原市を中心に、
堺市や羽曳野市、
南河内のあたりで、
また栽培が続いとる。
あの辺の粘土質の土がな、
難波葱特有の
あのぬめりと甘みを
育ててくれるらしい。
2017年には、
正式に「なにわの伝統野菜」として
認証もされて、
ようやく、
また名前が表に出てきた。
旬は冬。
11月から3月くらいまで。
寒くなればなるほど、
甘みがぎゅっと詰まる、
そんな性質も、
なんか大阪らしいなあ、
って思うんよね。
派手やないけど、
ちゃんと土地と時間が残した味。
難波葱って、
そういう野菜なんやと思う。
大阪の食の話を、
もう少し知りたい人には、
『なにわ大阪の伝統野菜』みたいな本を
ゆっくりめくるのもええと思う。
https://amzn.to/4k7BNpe
読んでると、
土の匂いが、
ちょっとだけ伝わってくる気がするんよね。
by果物ボブ

