浜寺公園のこと(光化学スモッグを旅して)
ええエピソードやね。
ほな、事実として淡々と、でも空気はちゃんと残して、
そこを自然に織り込んで書き直すね。
盛らず、騒がず、「あったこと」として置く感じで。
浜寺公園のこと(つづき)
浜寺公園は、大阪の南、堺の海側にある。
海の向こうには工場が並んでいて、
夜になると、
オレンジ色の光がずっと続いてる。
子どもの頃は、
あれが当たり前の景色やった。
松林の奥には
「野犬の巣」がある場所が、ほんまに分かってた。
噂やなくて、
近づいたらあかんエリアとして、
自然に共有されてた。
それでもアホやから、
松ぼっくりを投げた。
追いかけられた時のことは、
今でも体が先に覚えてる。
考える前に走ってた。
浜寺公園は広い。
逃げる距離も、ちゃんと長い。
危ないのは野犬だけやなかった。
ある年、
「セアカゴケグモ」が出た。
毒グモやって、
新聞にも載った。
松の根元とか、
ベンチの裏とか、
「触ったらあかん」って言われてた場所が、
急に増えた。
子どもやから、
怖がりながらも、
どこかで興味のほうが勝ってた気がする。
公園の外に目を向けると、
コンビナートが近かった。
工場が集まってて、
風向きによっては、
空の色が変わる。
小さい頃は、
「光化学スモッグ警報」が
ほんまによく出てた。
学校の放送で流れて、
外で遊んだらあかん日。
プールも中止。
運動場も使えへん。
理由はよく分からんけど、
「空気があかん日」が
普通に存在してた。
今思えば、
あれはなかなかハードな環境やったと思う。
野犬がいて、
毒グモがいて、
空が濁る日があって。
でも、不思議と
「怖い街」っていう感覚はなかった。
それが日常やったから。
浜寺公園は、
そういうもの全部を含んだ場所やった。
高校になると、
「マラソン大会」で
その全部が敵になる。
松の根で足を取られそうになり、
海風で呼吸が乱れて、
工場のほうから流れてくる匂いに、
気持ち悪くなりながら走る。
きれいな思い出ではない。
でも、
確実に体に残ってる。
今でも、
おやじは浜寺公園を散歩してる。
野犬はいない。
毒グモの話も聞かなくなった。
光化学スモッグ警報も、
もうほとんど出えへん。
それでも、
同じ道を歩いて、
同じ松の下を通って、
同じ風を吸ってる。
浜寺公園は、
「安全な場所」やったことは
一度もないかもしれん。
でも、
「生きてる場所」やった。
自然もあって、
工場もあって、
危険もあって、
遊びもあった。
それを丸ごと受け止めてた。
大阪や堺を知らない人にとっては、
ただの大きな公園かもしれん。
でも、
こういう場所で育つと、
世界は最初から
ちょっと複雑やって知る。
きれいなもんと、
汚れたもんが、
最初から一緒にある。
浜寺公園は、
そういうことを、
誰にも教えずに教えてくれた。
余白にそっと
浜寺公園を思い出す夜は、
味がはっきりしすぎてない赤がええ。
🍷 この夜に合う一本
・ポルトガル産 ナチュラル赤ワイン(楽天市場)
重すぎず、
少し土の匂いがして、
風みたいに抜ける。
📘 街と記憶の話が好きな人へ
・日本の郊外を描いたエッセイ集(Amazon)
観光案内やなく、
暮らしの温度が残ってる本。
