雲を追い払う白──TENTENUBLO V.L.A.V. 2017

Rioja / Roberto Oliván / Blanco / 5,120本限定

巣鴨のミランのカウンターで一本の白を開けた夜。

ラベルには、雲を追い払うように走る黒いキャラクター。

なんとも言えんユルさと、スペインらしい土臭い魔術が同居している。

ワイン名は TENTENUBLO(テンテヌブロ)。

意味は、「雲よ、止まれ」。

──そう、昔のスペインで“雹(ひょう)の嵐”を追い払うために

鐘を鳴らしながら叫ばれた言葉や。

裏ラベルには、こんな呪文のような祈りが書かれている。

「Tente nube, tente nu, que Dios puede más que tú…

雲よ止まれ、神はお前より強いんや。」

嵐から畑を守るために、

農民たちが空に向かって叫んだ祈り。

それをそのままワインの名前にする造り手──

ロベルト・オリバン。

彼は、普通のリオハの造り手とは少しちがう。

ロベルト・オリバンという“土地の息づかせ方を知る人”

リオハの中でも奥まった、

山の上の小さな村 Viñaspre(ビニャスプレ) で育った造り手。

大量生産のメインストリームに乗らず、

古い畑と、静かな土地の香りを大切にしている。

この V.L.A.V. 2017 は、わずか 5,120本のみ の限定生産。

白ワインの構成は、

リオハの伝統的なブドウ──

Viura(ビウラ)と Malvasía(マルバシア) を中心に、

いくつかの古い地場品種がブレンドされている。

特に2017年は乾燥した年で、

白ブドウの皮がやや厚く、

そのぶん香りにキレがあり、

味わいの輪郭がはっきりしている。

グラスから立ちのぼる“高地の白”らしい香り

最初に立つのは、

白桃の皮のような控えめな甘み。

そのあとに、

・青リンゴ

・セージ

・レモンピール

・白い花

・濡れた石

冷涼な地域の白ワインが持つ、

“キュッと背筋が伸びるような香り” がする。

味は軽いけど、薄くはない。

酸は鋭くなく、

山風が舌をなでるような静かな流れ方をする。

余韻は短いけど、

その短さが逆に潔い。

飲み終わったあとに空気だけが残る感じ。

これがロベルト・オリバンの白らしさやと思う。

ワインの中に、スペインの遠い祈りが眠っている

呪文 “Tente nube” は迷信やない。

雲を追い払う儀式は、

本当に行われていたものや。

畑も、家も、暮らしも、

天候ひとつで全部失われてしまう時代。

だから人は、

鐘を鳴らし、

空に向かって叫んだ。

「雲よ、行くな。

雲よ、止まれ。」

ワインを飲んでいると、

遠い昔に誰かが叫んだその声が、

液体の中でときどき小さく揺れるように感じる。

ぶどうも、

土地も、

人の暮らしも、

本来は天気とつながっているんだと

思い出させてくれる一本。

巣鴨の夜に、この白を選ぶ理由

静かな白が欲しい夜がある。

派手さも強さも、

今は求めてへん──そんな夜。

ミランの片隅に座り、

厨房の熱がすっと冷えていく時間に、

この V.L.A.V. はちょうどいい。

音のない白。

余白のある白。

飲み手に話しかけてこず、

ただ寄り添うためだけにそこにある白。

スペインの山間の静けさが、

巣鴨の深夜にそっと重なる。

🍷 今日の相棒(Amazonアフィリエイト)

※リンクはあなたが後で貼りかえてください。

・リオハ白ワインをもっと知るためのガイド

【Amazonリンク】

・細口の白ワイングラス(香りを拾いやすい)

【Amazonリンク】

・ヨーロッパのワイン文化本

【Amazonリンク】

・深夜の読書灯

【Amazonリンク】

Text by Bob MyLan

巣鴨のワインバー店主より