風の細道を歩くワイン──JOSEP FORASTER “TREPAT” 2023

巣鴨の夜、ミランのカウンターに一本の赤が立った。

JOSEP FORASTER の “TREPAT”。

ラベルの白さが、店の灯りに静かに浮かび上がる。

トレパット──

カタルーニャのコンカ・デ・バルベラにだけ息づく、

ほっそりとした赤ワインのブドウ。

軽やかなのに、影がある。

薄いのに、奥行きがある。

まるで“風でできた葡萄”みたいな品種や。

“There’s an evening’s haze settling over the town”

そんな歌詞が似合うワインやと思う。

100% TREPAT、老樹のかすかな渋み

2023年。

ボトルの裏ラベルには “Vinyes velles(古木)” の文字。

老樹は、無理をせず、ゆっくり実をつける。

派手さより、静かな芯の強さが出る。

この “TrepAt” の香りにも、それがしっかり宿っている。

ラズベリー、ザクロ、ダークチェリー。

その奥に、ほこっと香る乾いたハーブ。

アルコールは12%。

重さではなく、

“余白”で飲ませる赤。

ペネデスでも、プリオラートでもなく、

この地域だけの涼しい風をまとっている。

モンブランの土と、フォラスター家の畑

このワインをつくる JOSEP FORASTER は、

1920年代から家族で畑を守ってきた小さな造り手。

場所は Montblanc(モンブラン)。

カタルーニャの内陸、山影に抱かれた土地。

昼と夜の寒暖差がはっきりして、

そのおかげでトレパットが“色より香り”の葡萄になる。

Serra de Miramar(ミラマル山系)の斜面に広がる畑は、

昼の光より、夕方の風の記憶のほうが残りやすいらしい。

そう聞くと、なんだか味わいの輪郭まで腑に落ちる。

飲むたびに軽くなる赤

TrepAt は、

「軽い」んじゃなくて、

「軽やか」。

口の中の真ん中にだけ静かに芯を残して、

全体はふわっと抜けていく。

鴨のコンフィより、

ミランの“焦げを使った料理”のほうが相性が良い。

焦げのほろ苦さと、

TrepAt のざらりとしたタンニンが、

お互いの弱点をそっと支え合う。

ちょっと疲れた日の夜、

「今日は重い赤いらんわ」と思った時に、

この一本がちょうどいい呼吸になる。

今日のミランのカウンターにて

写真のラベルを見つめながら、

ふと思った。

ワインって、

「味」よりも

「その日はじめて深呼吸できた瞬間」につながる飲み物なんや、と。

TREPAT は、

喧騒の多い一日を終えた後の、

“余白の一杯”。

働いた体の隙間にそっと入ってきて、

気づけば肩の力が抜けている。

星の道と傷のあと。

そんなタイトルをつけたくなる夜に、

ぴったりの赤やと思う。

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Text by Bob MyLan

巣鴨のワインバー店主より